M-1グランプリ2022の感想です
・カベポスター
見たことあるネタだったけど、トップバッターということが加味されていたりするアレンジだったり自分たちのペースや持ち味をちゃんと見せつけているのがあまりにも美しくて感動した。
いきなり全員寝かすんかくらい心地よくて、でも絶対に寝させない強さがあるのがすごく格好良かった。
トップバッター引いたらその時点でほぼ優勝絶望的な上にトップバッターのネタでその年の大会の雰囲気が決定づけられるの地獄すぎると思う。
ここ数年のトップバッターはそういう死に役としての仕事を完璧にやってのける人達ばかりなのでちゃんと色んなところで評価されて報われてほしい。
でもその仕事ぶりはM-1では決して優勝という形として報われないのが本当に恐ろしい番組だなと思った。
・真空ジェシカ
大好きになってこの一年ずっと応援していたので2番手というはやすぎる出順には若干の悲しみを感じつつも「もうネタ見れる!楽しみ!!」のほうが圧倒的に勝っていた。
そしたらめっちゃ面白かったので全身から感謝が溢れ出したけど松本人志の88点でなにもかもが消し飛んだ。
声量の話、「好きだけど実際そうだよな」みたいなのちょこちょこ目にしたけどそんなにか?
わからなすぎるところの批評が審査にクリティカルに刺さるとやるせなすぎる。
そもそもお笑いってどのフォーマットにおいても声質って超重要なはずで、なのに真空ジェシカはどちらも全然良い声じゃないしガクさんにいたってはかなりくぐもっていて聞き取りづらくてそれなのに面白いのが俺にとっては革命だったのでまだ声関連で問題あるのかよって気持ちになった。
まあでも今回で完全に売れてもっと色んなところで見られる様になるだろうし、その上で飽きられずにまた決勝で漫才も見られるだろうから大満足でした。
真空ジェシカの魅力って引きずり込まれるハイコンテクストさだと思っていて、インターネット感の本質もそこだと思う。
俺は深夜ラジオとかが結構苦手で、それは漠然となんか放送コードがゆるいとされていて、妙な選民思想の様なものがあって、やってる人にも聞く人にもあらゆることに「言ったった感」が付随するのが「そっちがわに行きたくない!」となるからなんだけど、
真空ジェシカはとてつもなく突き放してる様でいて来るものを全く拒んでいないのが本当にすごくて、本人たちもまわりの人たちも楽しそうだからどんどん調べてついてきたくなってしまう。
ママタルト、怪奇!yesどんぐりRPG、令和ロマンなんかも近い存在で大好きなんだけど、その中で俺が真空ジェシカが軍を抜いて好きなのは、内輪や大衆向けを意識せず矛盾を孕むレベルで広さと狭さを併せ持つネタや立ち振舞いを突き通しているからなのかな、と思う。
すべてのまーちゃんにごめんね。アルティメットありがとう。
・オズワルド
3回戦動画見た時「まだまだ進化しててすげー!」って思ったんだけど、敗者復活戦で結構昔からあるネタやってて「なんか違うかも」と感じてそれがそのまま決勝でも拭えなかった。
完全に面白いのになんか変な感じになっちゃうの本当に恐ろしい番組だなと思った。(2)
ヤーレンズや令和ロマン見たかったな。
・ロングコートダディ
「かなり曖昧な言葉でしか表現できないが苦手なタイプのネタ」というのがあってそれが「バタバタしてるやつ」なんだけどロングコートダディの一本目がまさにそれだったので全然頭に入ってこなかった。
ロングコートダディ自体は超好きだし、反省会や打ち上げで先輩芸人が褒めていた部分(大喜利重ねて重ねておいて「太ってる人」が来る感じ)とかもすげーわかるし「青春に抜かされる時のフリの段階で女子が背中押されてる時もちゃんとずっと靴に違和感感じてる兎さん」とかもおもしろかったんだけど、「バタバタしてるなー」が勝ってしまった。
でもこれ書くにあたって2回目見たらかなりバタバタしてる感が減っておもしれ~となったのでお笑いとはなんて刹那的なんだと思った。
最終決戦のネタも1本目見た時のを引きずっててあんま入ってきてなかったけど今見たら超面白かった。
でも昨日見た時に「そんなかな...」となったのが昨日の俺にとっての全てなのかなと思う。
・さや香
5年前初めてみた時そんな好きじゃないなと思ってほとんど頭に残ってなかったんだけど、去年敗者復活戦でえげつないネタやってていまこんなすごいことなっとるんかいと思ったんだけどハマりきりはしなかった。
「さや香今年すごいぞ!」みたいなのをよく目にしたのでじゃあまあ見てみるかと3回戦見たら信じられないくらい真っ当にかけあうしゃべくり漫才やってて「すご!!!」と思った。
なので超期待していたんだけど、期待以上の熱量をもったネタが2本も見れてすごく大好きになった。
特にすごいのは石井さんの演技力だと思う。
石井さんが言う変なことを受けて、新山さんのパッションによってネタが展開していくけど、石井さんがずっと「素で言ってる」みたいな自然さを崩さないから新山さんがおかしくなってボケになる展開も違和感なく入ってきてマジで面白かった。
あともう何年も会ってない同い年の従兄弟の顔がなんとなく新山さんに似ているのだけど従兄弟の顔の情報がアップデートされることがないのでどんどん頭の中で新山さんになっていって見ていていとても安心感や懐かしさがあった。どんな感想?
事後番組でしきりに「来年の優勝候補」としてもう見られていてそれを背負ってやって行かなければならないことへのエグさを語っていたけどそんなもん跳ね除けていける強さがあるように思った。
・男性ブランコ
何回も見てずっと面白いのはこのネタなんじゃないかなと2022年12月19日現在は思っている。
よく上品と評される落ち着いた語り口と心地の良いテンポはそのままに、相方を殺しまくるバイオレンスさ、それがちゃんと見えるマイムの上手さ、どれも素晴らしかった。
最初に浦井さんが死ぬとこと倒れた後の死にっぷりすごすぎる。
「まず音符は大きいんですね」とか、殺してアワアワしてる平井さんが「これがこうなって死んだ」みたいなジェスチャーもいちいちやってるのとか、細かな変なとこもちゃんと全部面白くて良かった。あとYouTubeのサムネめっちゃおもろい どこ切り取ってんだよ。
いやぁ、面白かったなあ...
・ダイヤモンド
割を食うというか、面白さが会場に全く伝わらないコンビが毎年どうしてもいるけど今年はダイヤモンドだったなあ...
彼らは色んなシステムやスタイルのネタがあるけどその中でもこのネタはかなりハマった時とハマらない時の明暗がくっきりわかれるような気がしてこれじゃないほうが良かったんじゃないかなとか思ってしまった。
でもやっぱり「もねってやめてよ!><」とか「お前めちゃくちゃ食べるなあ!」とかすごく好きだし、ウケてる部分はちゃんとあったし絶対また決勝で見たい。
あと野澤さんの顔がヤバすぎるのが話題になってるけどファイナリスト発表の時のマイナス200みたいな状態から名前呼ばれておひさまみたいな笑顔になるシーンもめっちゃ良いので見てほしい。
ラッキー順位 10位
・ヨネダ2000
去年の敗者復活戦で初めて見て「すごすぎ!」ってなったんだけど今年1年ずっとすごすぎだった。
ランジャタイとの類似性がちょこちょこ話題に上がるけど俺はどちらかと言うと「めっちゃくだらないのに一つのミスで瓦解してしまう緻密でハイレベルなかけあい」という部分がとてもジャルジャルと近いなと思っている。あとどっちもテクノすぎる。
でも大きいくくりとして近いものを感じるよねという話でしかなくて、発想は無二過ぎるしこれで3年目というのもヤバすぎてこれからが本当にずっと楽しみ。
あと2人とも声がマジで良い!セリフ量の多い清水さんは勿論、あんま喋ってなかったり延々リズム取らされてる愛さんも目立ちにくいけど凛とした綺麗な声してますよね。
平場もふざけ倒すのかと思ったらちょっと天然出してみたり、喋ろうと思えば全然普通に喋れるとことかも最高だった。面白かったなあ。
・キュウ
キュウもかなり響いてない感があったけどダイヤモンドほど打ちのめされてなかったし、これが自分たちの漫才だって堂々と見せつけていて格好良かった。
っていうか言葉遊び系の人達ってM-1ウケないのか?という気づきがあった。
でもキュウって言葉のおもしろみを弄る部分と同じくらいの勢いで清水さんの顔芸も強いからそっちもあんまりハマってない感じだったの悲しかったな。
未だに一昨年の敗者復活戦のあいうえお作文人気だし、いつかバチッと会場にハマってすごいうねりみたいなものを作ってるとこも全然想像できるから今後も楽しみ。
・ウエストランド
こんなにヒーローでもアンチヒーローでもない出で立ちや芸風の人が、あらゆるものを味方につけて好き放題言って優勝までしたのは何周もした感動があるなと今更感じた。
1stトリからの2ndトップで「言い足りないし聞きたりないっしょ」みたいな勢いでおんなじネタするのすごすぎた。
悪口漫才だなんだとか言われてるけど今年はかなり共感に寄ってるというか、間違いなく誰かを刺してはいるんだけど、誰しもがうっすら思ってる/感じてる偏見を知らなすぎる言い回しで言語化していてとてもおもしろかった。警察に捕まりはじめている???
あとこういうネタって熱く語ってる人を馬鹿にするのに引用されるけど、それこそ皆目見当違いだと思う。なぜ自分は刺されてないと思えるのか。井口さんは明日にも君を刺すぞ。
ちなみに元々「ネタはつくらないけど大喜利ライブでるハガキ職人うざい」みたいなくだりがあったらしくてそれがなくなっていたことがお笑い好きの間で話題になっていて、
「さすがにまずいから」とか「地上波で言うまでの存在じゃないから」とか憶測が飛び交っていたけど「河本さんがネタを飛ばした」が一番有力なのが最高だった。あのセリフ量で、よりにもよってなくすことで物議を醸すとこをピンポイントで行くのおもしろすぎる。
あと「M-1エモくしようとしがち問題」について、僕は「決勝のVTR」は「はやくネタが見たいなあ~」と思いながら話半分で聞いてるのでよくわからないし、「アナザーストーリー」はまだ人となりまで興味持つ程大好きな人が優勝してなくてそもそも見たことがないからわからない、というキモバランス感覚を持ってM-1に接しているので「みんなそう思ってるんや へへへ」くらいの感じで聞いていました。
まあとにかく言いたいのは今年もとてもとてもおもしろかったということで、本当に最高でした。
大好きな人達とお笑いの話してぇ~ みんなも感想、見せてくれよな!
それでは、また...